クサントスからカヤキョイまで乗せてくれたアーシンと別れた私たちは、とりあえずゴーストタウン改めゴーストビレッジの中へ。
ふもとには、現在使われていそうな住居がありました。朽ち果てた上部を塗り固めで補修しているようですね。
丘の上に上ってみました。
どの建物にも屋根は見当たらず。
屋根を失った家々の内部には、良好な日差しと雨が降り注ぎます。
そのため、かつて床だった場所からは植物が伸び放題。
写真手前も、元は屋内だったのが今は藪になっています。
今にも崩れそうな壁と採光用の小窓が残るのみで、建物としての機能はまったくありません。
廃墟の中で一夜を明かそうと思っていたのでアテが外れました。
ちょっとだけ散策。
各家庭への通り道がかろうじて残っています。
この場所は、元々ギリシャ人が暮らしていました。
トルコとの戦争中に故郷を追われて移民してきた人達です。
彼らはその後、「住民交換プログラム」により強制退去。
その後トルコ人が居住しますが、地震の際に強奪が起き、村は修復されぬまま放置。
住人を失ったまま年月が経ち、現在は観光地としてのゴーストタウンになっています。
悲しい争いの記憶があるだけに、人々の怨念が残っていそうですが、スピリチュアルなことに疎い私たちはここで野宿決定です。
テントも寝袋も無く、完全なる雑魚寝。吹きさらしなので寒さだけが心配です。
夕暮れが近付いてきました。赤みが差した村は、なんだか温もりを感じます。
暗くなる前に夕食を済まし、コーヒーを淹れます。
着火剤に最適な カラカラに枯れた松葉が一面に落ちているので燃料には事欠きません。
その代わり火起こし中はもちろん、風に吹かれる火の粉にも注意しなきゃ。
一歩間違うと山全体に燃え広がっちゃいます。
黒こげのゴーストビレッジ・・・さすがに怖いかも。
いやその前に放火犯としてタイホされちゃう。
陽が沈みました。さすがはゴーストビレッジ、町の灯りはほとんど見えません。完全な闇がやってきます。
スマホのライトを使ってなんとか食後のコーヒーも済ませ、眠りについたのも束の間、寒さで熟睡できません。
どうしたもんかと思っていると、何者かの足音。
ガサガサと音をたてながら、一直線にこちらへ近づいてきます。
そう、ゴーストや怨念なんかは怖くないんです。
怖いのは野生動物や蛇、毒虫の類、それよりもっと怖いのは生身の人間でしょうか。
かなりの速足で歩いています。もうかなり近い。
と、その何かが足を止めました。こちらを見ているのが分かります。
でも、暗くてシルエットすら分かりません。「目が慣れる」って、ある程度光があるから可能なんですね。
ただただ視線を感じるだけです。連れは寝ているし、こっちに飛びかかってきたらヤダな・・・。
シッ!と叫び、体を起こすと脱兎のごとく走り去りました。
正確な大きさは分かりませんが、草を分け歩く音の感じから猪かな?野犬なら吠えるし、鹿のように重心の高い動物でもなさそう。
あ~怖かった。
一度、寒さのあまり起きてお湯を沸かして飲みました。
でもトイレに行きたくなるのでどっちみち熟睡はできずでした。
夜明け前には起床した私たち。朝のコーヒーとパンで簡単な朝食を済ませ、フェティエのオトガルを目指します。
まだ冷え冷えとした空気の残る早朝。冷たい廃墟の間を下ってゆきます。
廃墟にたたずむ私。
煙突らしきものも見えます。本当に人が暮らしていたことが分かりますね。
キリスト教徒であるギリシャ人が暮らしていた村。よく見ると十字架が彫られています。
教会ですね。壁もあって、床もちゃんとありました。ここで寝ればよかった・・・・・(笑)。
中はほのかに暖かい。本当にここで寝ればよかった。
こちらは何やら受付っぽい机があり、今も使われているように見えます。
なんだろうね。
お花も育てられて。
ガラス窓が入っているから、すくなくとも最近まで誰かが使っていたもよう。人の気配はありませんでした。
人通りのまるでないこの時間。
ここからフェティエのオトガル (バスターミナル) までは9.5㎞。
食事休憩をとりながら山道を歩くので4時間くらいかけて移動予定。
ふもとには家畜と番犬のいる家が多く見られました。
バス停もありました。ある程度の数の人が生活しているようです。
小さいながらも観光地ですからね。
モヤがかかったゴーストタウンをバックに佇む廃屋。
ここだけ逆光で薄暗く、ちょっとホラーな雰囲気ですね。
色のない風景とモヤの向こうに見えるゴーストビレッジ。
ホラー映画なら何かが起きそうな予感しかしない光景。
結局心霊現象の類は起きませんでした。
期待していた方、もしいたらごめんなさい。
山道に入りました。道なき道を予想していたのですが、きれいに整備されている!
しばらく歩くと、糖蜜と生ゴミを混ぜたような甘ったるい腐臭が漂ってきました。
ひどい臭いだと思っていると、二コラが「動物だろうね」と言いました。
動物?何のこと?と思いながらさらに数メートル歩くと、猪の死骸が横たわっていました。
驚くのはそれに集る蛆虫。お腹には数万匹、もしかしたら数十万匹がすごい勢いで食らいついていました。
こんなに大量の蛆がみっしりとひしめき合いながら うねうねと高速で攀じるのを、気味悪く思いながらもじっと見入ってしまいました。
見た目が強烈で臭いすら一瞬忘れていました。
不思議なことに背中には一匹もいなかったので、やっぱり脂肪の多いお腹から食べていくんだなぁなんて考えていました。
柔らかくて分解しやすい上にハイカロリーですからね。
気味悪かったけど、貴重なもの見たなぁ~。山を少し上るとお腹が空いたのでおやつ休憩。
ゴーストタウンにかかっていたモヤも、晴れてきました。
上の方に山羊の群れを見ました。それから車道を通ったり獣道を通ったりしながら
山を越えるとフェティエの街が見えてきました。
全体は見えないけど、港の形が・・・八角形?
モスクを始めとするイスラム教の建造物でよく使われている形です。
日本の「末広がり」と同じように、イスラム教でも8は吉数とされていますからね。
できれば全体を見たかったです。きれいなんだろうな。
と思ったのですが、後から地図を確認するも八角形は見当たらず。
見えている部分がギザギザになっているだけみたいです。
う~ん、見えない部分を脳内補完して八角形だと思い込んでしまいました。
偶然にもそこだけ見えるようになってるのが不思議と言えば不思議。
このあとも山道を滑り降りたり、通りに生ってたザクロを食べたりしながらフェティエに到着。