メルボルンで屋外アートを究める!【ストリート編】

メルボルンストリートアート

メルボルンを歩いていて、私はふとインドを思い出しました。

インド料理屋の前を通りかかったからでも、インドの風景と似たものを発見したからでもありません。
近代的なビルと先進的な生活が行き渡ったオーストラリアは、人々が地べたに近い位置で暮らしているインドとは全然違います。

私にインドを思い出させたのは、街角や自然の中でふと遭遇する「意外性」でした。

インドの首都ニューデリーで、私はマクドナルドの前に牛がたむろしているという光景を見ました。
人工物のなかに、ふと、牛。

初めて見たときはすさまじい違和感でした。
一国の首都の建造物のスキマに、いるはずのないものが存在している。
しかしそれは同時にインドという国に溶け込んでいる風景でもあり、見慣れてくると、妙に面白く感じるようになりました。

そのような違和感と発見を、私はメルボルンで何度も感じました。
壁に描かれた絵、交差点に置かれたオブジェ、自然の中の彫刻から。
そしてその意外性を、メルボルンはアートという形で、戦略的に作り出しているのではないかと思います。
街角で、海で、森で。もちろん美術館でも。

メルボルンストリートアート

「美術」というとどこか人を身構えさせる響きがありますが、アートは美術館だけにあるものではなく、風景に溶け込んで、意外性や安らぎ、発見を与えてくれるものではないでしょうか。
その観点で見ると、メルボルンとその近郊はアートの宝庫です。

私は美術を専攻して勉強したことはありません。
が、世界一周旅行をしながら各国の美術館に連日通い、けっこうな時間(と貯金)を美術館に捧げたハードコアなシロウト……とちょっぴり自負もありまして、そんな一美術ファンがおくるメルボルン・私的美術案内を、気軽に読んでいただきたいと思います。

街角の美女を探せ! ストリート・アート

ストリート・アートというと、高架下にごちゃごちゃっと落書きみたいに描いてあるものを思い浮かべるかもしれませんが、それだけではありません。

たとえば、ロンドンを中心に活動する覆面アーティスト・バンクシーが思い浮かびます。
彼(?)が注目を集めた理由は、隠されたプロフィール、大胆な活動形態、そしてやはり、描かれた絵のレベルの高さにあるでしょう。
ときには政治的メッセージを込めた絵をステンシルの手法を使って描き、話題となりました。

また、壁面を使うという点では、20世紀前半のメキシコの壁画は、ストリート・アートに通じています。
当時の芸術家たちは革命のさなか、西欧からの借り物ではないメキシコ独自のアイデンティティを呼び起こすために、宮殿や劇場の壁に絵を描きました。
私はその壁画を実際にメキシコシティで見て、巨大なキャンパスを使って人々に訴えかける圧倒的な力に驚嘆しました。

さて、現代社会に戻りますと、メルボルンはストリート・アートが盛んで、そのレベルは高く、私がこれまで旅したどの国よりも見応えがあります。

ほら、たとえば、これ。

メルボルンストリートアート

これはメルボルンの中心部から南下したFrankstonという町にあります。

このような風景画だけでなく、抽象、動物、人物、美しいもの、スタイリッシュなもの、国内外の政治を風刺するもの、タッチもテーマもさまざまです。

メルボルンの本屋にはオーストラリアのストリート・アートに関する本が何種類も売られているので、アーティストたちの認知度も、一定程度あるのではないかと思います。

さて、私が出会ったとっておきのアートを紹介しましょう。
まずは、女性たちから。

メルボルンストリートアート_女性

カフェの向かいにある3人組は、客たちの談笑に参加しているようなやわらかな笑顔です。

メルボルンストリートアート_女性笑顔

ストリート・アートの醍醐味の一つは、四角でない、変形キャンバスであることかもしれません。
歩いていると、建物越しに振り返るようなこの少女と目が合います。

メルボルンストリートアート_少女

これも建物に描いているからこその、絶妙な構図。
肘をついているのが自然です。
何かを待ち望んでいるかのような視線に、想像がふくらみます。

メルボルンストリートアート_女性視線

私のお気に入り。視線を落とした格好いい女性。
ほかの作品もそうですが、メルボルンの街角に描かれる女性たちは、自立した存在感を醸し出しています。

メルボルンストリートアート_女性

木の後ろからの、視線の強さ。
「目力」でいうと、

メルボルンストリートアート_女性目力

彼女も凄まじいですね。

ストリート・アートは青空によく映えますが、例外もあります。

メルボルンストリートアート_女性曇天
曇天を舞台装置にするかのような、見事な一作です。

男性も少し紹介しましょう。

メルボルンストリートアート_男性
通行人や木も燃えてしまいそう。

メルボルンストリートアート_オジサン

このオジサンを見つけたときは、思わずにやけてしまいました。
ピンクと黄色とこの表情、インパクトでいえば現時点でナンバーワンの作品です。

動物たちも登場させましょう。
メルボルンストリートアート_動物

メルボルンストリートアート_動物 メルボルンストリートアート_動物

どれもキャンバスの形を活かしています。

これらはどれも、メルボルン中心部からトラムで行ける範囲にあります。
たとえばカフェや雑貨屋が多くサブカルチャーの雰囲気も漂わせる、ブランズウィック・ストリートやシドニー・ロード、スミス・ストリートなどを歩けば、いくつものアートに出会えるでしょう。

メルボルンストリートアート メルボルンストリートアート

ストリート・アートは日差しと風にさらされ、ときには上から落書き(これはアートではない)をされて絵が変わってしまっているのを見たこともあります。
それは大きなリスクでありデメリットですが、保護されず、永続しないものだからこその美しさも感じます。

今見たこの瞬間を目に焼き付けておきたい。
そう思わせるのが、ストリート・アートならではの魅力なのでしょう。

先日メルボルンの新聞「The Age」には、こんな記事が載っていました(2018年3月25日)。

インドの首都ニュー・デリーのLodhi Colonyという地域では、アート・プロジェクトとしてストリート・アートが描かれ、観光客が集まるスポットに様変わりした。
それにはメルボルンのアーティストも参加している。……

調べてみると、ピンクが鮮やかな幾何学模様のその作品は、アボリジニの伝統的なパターンを取り入れているとのこと。

メルボルンのアーティストが、オーストラリアの固有の模様が、インドの街角に「意外性」をもたらしている。
ストリート・アートの、それを取り巻く環境を変化させる力を改めて感じる記事でした。

ホワイト・ナイトのカラフルな夜

ストリート・アートが半永続的なアートとすれば、より一時的なアートもメルボルンには現れます。

メルボルンでは、しょっちゅうイベントが開催されています。

くまモンがゲストとしてやってきた「ジャパニーズ・サマー・フェスティバル」をはじめとする多文化社会ならではの各国の祭り、鳥人間コンテストもある「ムンバ・フェスティバル」、ジャズなど音楽に関するイベントなどなど……。

その中で「アート的なるもの」を発見したのは、「ホワイト・ナイト」でした。

ホワイト・ナイトはメルボルンの主要イベントの一つであり、本年(2018年)は2月17日に開催されました。

その名の通りオールナイトのイベントですが、私はもう徹夜なんてキツい……ということで、少しだけのぞいて帰ることに。

夕方にはすでにイベントの準備がなされ、市中心部からヤラ川を渡ったピクニック・エリアには、見慣れないオブジェが次々と現れます。

メルボルンストリートアート_オブジェ メルボルンストリートアート_オブジェ

夜9時頃、フリンダース・ストリート駅周辺に行くと、人がぎっしりと集まっています。
駅はライトアップされ、フェデレーション・スクエアから続く通りには、建物に映像を映し出すプロジェクション・マッピングが施されていました。
メルボルンストリートアート_プロジェクション・マッピング

メルボルンストリートアート_プロジェクション・マッピング メルボルンストリートアート_プロジェクション・マッピング メルボルンストリートアート_プロジェクション・マッピング

次々と移り変わる光と色に魅せられる、不思議な夜でした。

このような派手なイベントと比べると地味ですが、最後に街なかを走るアートもご紹介しましょう。
メルボルントラムアート_アボリジニ
アボリジニに関するストーリーを両面で伝えているこのトラム。
街を縦横に移動する、究極のストリート・アートといえるのかもしれません。

さて、そろそろ町を出て、自然の中へと向かいましょう。

光のビーチ・神秘の森編】に続く。

(ライター:NAO)

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